内分泌内科について
ホルモンは分泌が多過ぎても少な過ぎても多様な症状をあらわします。
内分泌器官の異常による様々な疾患を専門的に扱う診療科が内分泌内科です。
内分泌疾患としては、甲状腺疾患として甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症、副腎疾患として副腎腫瘍、原発性アルドステロン症など、下垂体(脳下垂体)の疾患として下垂体腫瘍や下垂体機能低下症などが代表的です。また、膵島の異常によるインスリン異常も内分泌疾患の一つです。
それぞれのホルモンが担っている役割によってあらわれる症状は異なります。甲状腺では、身体機能の過剰な活性化(バセドウ病)や低下(橋本病)、副腎では原発性アルドステロン症による高血圧症などがあらわれ、さらに肥満、脂質異常症なども内分泌疾患によって起こっている可能性が考えられます。
こうしたホルモン異常は、特徴的な症状が少ないため見過ごされていることも多いのですが、長く続く体調不良などは内分泌異常によってもたらされている可能性もあります。まずは内分泌内科にご相談ください。
内分泌内科で行う検査
まずは血液検査を行い、甲状腺ホルモンの分泌状態を確認します。検査する項目としては、下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)、甲状腺から分泌される甲状腺ホルモン(FT3、FT4)の3種類のホルモンです。甲状腺疾患は自己免疫疾患であることが多く、ホルモン値に異常が見られる場合は、甲状腺に対する抗体を測定します。
内分泌内科でみられる症状
甲状腺機能に異常があると
起こる症状
- 全身がだるい、倦怠感がある
- すぐに疲れるようになった
- 髪の毛が抜けやすくなった
- 顔や全身にむくみがある
- 筋力が低下してきた、筋肉疲労が強い
- 首の付け根の前側、のど仏の下の左右が腫れている、痛みを感じる
甲状腺機能亢進の症状
- 急に暑がりになった
- 汗が異常に多くなってき
- いつもより脈が速くなった、ドキドキと動悸がする
- 息切れするようになった
- 眠れなくなった
- ずっと微熱がある
- 手足がふるえるようになった
- 身体全体にかゆみがある
- のどが渇く
- 食欲があり食事量はあるのに体重は変わらない(もしくは減る)
- 排便回数が増えてきた(下痢)
- 眼球がせり出してきた(飛び出ている)感じがする
- イライラしやすくなった
甲状腺機能低下の症状
- 以前より寒がりになった
- 汗をかかなくなった
- いつも眠い(しっかり寝ているはずなのに眠い)
- 普段の体温が以前より低くなった
- 脈拍が以前より遅くなった(徐脈)
- 体重が増えてきた
- 肌が乾燥しやすくなった
- 声が嗄れやすくなった
- 便秘しやすくなった
- 動作が遅くなった
- やる気が出ない状態が続いている
- 物忘れがひどくなった
甲状腺とは
甲状腺は、甲状腺ホルモンを分泌する内分泌器官で、首の前側にあるのど仏の真下に位置し、右葉と左葉と左右対称に、蝶が羽を拡げたように存在しています。平均的には縦幅が4cm程度、重さは15g程度で気管をとりまくような状態になっています。健康な状態の甲状腺は柔らかく手で触れてもその存在を感じることはありませんが、何かしらの異常が起こると腫脹し、首の付け根が太くなったり、手で触れて存在を感じるようになったりします。
甲状腺で産生される甲状腺ホルモンは、人体の健全な発育を促進し、また身体の活動を活発にし、新陳代謝を促進する働きをもっています。そのため、甲状腺ホルモンの分泌が過剰になっても過少になっても、様々な全身症状があらわれます。
甲状腺疾患
甲状腺ホルモンが
増加(亢進)する病気
バセドウ病
甲状腺ホルモンの分泌が過剰になってしまう代表的病気で、20~30代の女性に多い自己免疫疾患です。抗甲状腺薬の内服、アイソトープ内用治療(放射線治療)、外科的治療などを状態に応じて検討します。当院では、抗甲状腺薬の処方を行っています。その他の治療に関しては、連携する高度医療施設を紹介しています。
亜急性甲状腺炎
甲状腺の炎症によって、甲状腺の組織が壊れ、蓄積されていた甲状腺ホルモンが急激に血中に放出されてしまう病気です。炎症はウイルス感染などによって起こり、風邪をひいた後などに発症する場合が多くなっています。数か月を経て自然に治っていく病気ですが、症状によっては抗炎症薬やステロイド薬による薬物療法を行うほか、甲状腺ホルモン亢進による動悸が激しい場合は、脈拍を抑える薬(βブロッカー)を処方することもあります。
無痛性甲状腺炎
何らかの原因によって甲状腺に炎症が起こり、甲状腺を構成する濾胞(ろほう)という組織が壊れて、濾胞に蓄えられているサイクログロブリンという甲状腺ホルモンが血中に放出されてしまう病気です。亜急性甲状腺炎とともに「破壊性甲状腺炎」と呼ばれています。
甲状腺ホルモンが一時的に過剰になるため、動悸や発汗といった甲状腺ホルモン亢進症の症状があらわれますが、多くの場合数か月で自然にホルモン値は正常に戻ります。症状として動悸が激しい場合には、動悸を抑えるお薬などを処方することもあります。
妊娠や出産をきっかけに発症することが多く、またバセドウ病の回復期にかかることもあり、何度も繰り返す傾向があります。
甲状腺ホルモンが
減少(低下)する病気
慢性甲状腺炎(橋本病)
甲状腺ホルモンが低下すると、首の腫れや疲労感、倦怠感、無気力、体重増加、便秘、皮膚の乾燥などがあらわれます。甲状腺ホルモンが低下する疾患の代表的なものが慢性甲状腺炎(橋本病)です。自己免疫疾患の一つで30~40歳代の女性に多く発症します。
初期の段階では検査をしても甲状腺機能が正常と判断されることがあり、後に甲状腺機能が低下する場合もあります。
根本的な治療法がなく、症状に応じて甲状腺ホルモン薬を内服する治療を行います。
甲状腺疾患と勘違いされやすい疾患
症状 | 考えられる疾患 |
---|---|
倦怠感、無気力など | うつ病 |
物忘れ、もやもや感 | 認知症 |
体重の減少 | がん |
血圧上昇 | 高血圧症 |
動悸、息切れ | 心疾患 |
不定愁訴などの多彩な症状 | 自律神経失調症、更年期障害 |
むくみ(浮腫) | 腎疾患 |
肝機能障害 | 肝疾患 |
高血糖、尿に糖が出る | 糖尿病 |
甲状腺の腫れ・しこりは
ご相談ください
甲状腺疾患は、はっきりとした初期症状が無く、気づかないうちに進行してしまうことがあります。
気になることがあれば、一度当院の内分泌内科までご相談ください。検査の結果によっては、当院と連携する高度医療機関などを紹介します。