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バセドウ病

甲状腺機能亢進症とは

甲状腺ホルモンは人の身体の成長や代謝をつかさどる役割を果たしています。通常は下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって適切な量にコントロールされています。しかし、何らかの原因で甲状腺ホルモンが分泌過剰になってしまうことによって、身体の成長や代謝のバランスが崩れ、ほてり、発汗、動悸、手のふるえなど様々な症状があらわれるようになります。自己免疫が原因となることが多く、バセドウ病が代表的ですが、その他にも甲状腺炎、甲状腺の腫瘍といった疾患でも甲状腺の機能が亢進してしまうことがあります。甲状腺中毒症という言い方もありますが、ほとんどの場合、甲状腺機能の異常な亢進が原因となっています。

バセドウ病とは

バセドウ病は甲状腺ホルモンを分泌する組織を常に刺激する抗体が作られてしまい、甲状腺ホルモンが分泌され続けてしまう自己免疫疾患です。動悸、手指のふるえ、体重減少、眼球の突出などが主な症状で、のど仏の下に蝶のように拡がっている甲状腺に腫大がみられます。女性に多く、20~30歳代が好発年代です。この病気をはじめて報告したドイツ人医師の名前から病名がつけられました。

バセドウ病の症状

バセドウ病の症状バセドウ病の主症状は頻脈、眼球の突出に加えて、甲状腺の肥大ですが、動悸、手指のふるえ、汗を大量にかく、息切れ、全身の疲労感、体重減少などがあらわれることもあります。ただし、これらの症状は自律神経失調や更年期障害など、他の疾患でもみられるもので、鑑別が難しい場合もあります。バセドウ病は気づかずに放置してしまうと、全身の様々な臓器に不具合が起こって重篤な事態に陥る甲状腺クリーゼを起こしてしまうことがありますので、少しでも上記のような症状を感じた場合、当院までご相談ください。

全身 ほてり、易疲労感(疲れやすい)、だるさ、微熱、体重の減少
表情・首 目つきのきつさ、眼球が飛び出す、甲状腺の腫大
神経・精神症状 イライラ、落ち着きの無さ、眠れない、集中力が低下する
循環器症状 動悸、脈が増える、むくむ、不整脈、息切れ、心機能低下
消化器症状 食欲が出過ぎる、のどが渇く、便が軟らかくなる
皮膚症状 毛が抜ける、身体が痒い、多量の汗、皮膚の黒ずみ
筋・骨症状 筋力の低下、脱力感、手指のふるえ、一過性の四肢麻痺を繰り返す、骨が脆くなる
月経 月経が不順になる、月経が無くなる、不妊になる

バセドウ病の原因

甲状腺ホルモンは、脳の下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)が、甲状腺の濾胞と呼ばれる部分にあるTSH受容体を刺激して分泌されます。ところが、何かしらの要因でこの受容体を攻撃する自己抗体であるTSH受容体抗体ができてしまい、常に刺激を与えることで甲状腺ホルモンが過剰に作られることでバセドウ病を発症します。

バセドウ病に伴う病気

眼球突出

眼球のまわりを取り囲む筋肉を外眼筋といいます。バセドウ病ではこの外眼筋や眼窩の脂肪組織に炎症が起こるため、それらの組織が肥大化して眼球を押し出すようにして眼球突出が起こります。角膜に潰瘍ができたり結膜が腫れたりする場合もあります。必ずしも罹患者全員に突出が起こるわけではありません。

眼瞼後退

眼瞼(まぶた)の筋肉が緊張してまぶたが後退してしまうことがあります。特に上まぶたの筋肉が緊張するとまぶたが下がらなくなることもあります。ホルモンが正常範囲になると元に戻ります。

複視

眼球を動かすための筋肉に炎症が起こり腫脹すると、左右の眼球がうまく連動して動かなくなり、両眼で見た時にものが二重に見えることがあります。片眼で見た時には普通に見えます。

心疾患

甲状腺ホルモンの過剰によって、心機能が亢進するため負担がかかり、それによって不整脈や心不全などの心疾患が生じます。ホルモン値をコントロールすることが大切です。

甲状腺クリーゼ

甲状腺機能亢進症(甲状腺中毒症)があるにもかかわらず、十分な治療を受けていない状態で、外科手術を受けたり、重い感染症にかかったりと肉体的に強いストレスを受けた場合、意識障害や全身の様々な臓器障害を起こすなど、重篤な状態に陥る場合があります。これを甲状腺クリーゼといいます。甲状腺機能亢進症にかかわる症状を少しでも感じた場合は、適切な治療によってホルモン値をコントロールしていくことが大切です。

周期性四肢麻痺

甲状腺ホルモンが亢進している状態で、激しい運動を行った時や、暴飲暴食をしてしまった時に、四肢麻痺が起こることがあります。麻痺は一過性のもので数時間すると治りますが、これを繰り返すこともあります。特に若い男性の患者様に多い傾向があります。再発しないためにもホルモン値のコントロールが大切です。

高血糖

甲状腺ホルモンはエネルギーの代謝をコントロールするホルモンです。このホルモンが過剰になることで、糖代謝異常を起こし高血糖になることもあります。

骨粗鬆症

甲状腺ホルモンが亢進することで、骨代謝が早くなってしまうことがあります。あまり骨の生まれ変わりが早いと骨密度が低下して骨粗鬆症を起こしやすくなります。高齢者や閉経期の女性は特に骨粗鬆症を起こしやすいため気をつける必要があります。
甲状腺ホルモン値が正常に戻ると、骨密度も上がってきます。

その他

爪がギザギザになる、スプーン状になる、皮膚の白斑、脛部分に黒く色素がたまる前脛骨粘液水腫(ぜんけいこつねんえきすいしゅ)などもおこることがあります。

バセドウ病の検査と診断

バセドウ病の検査と診断バセドウ病の検査は、採血検査で甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモン(TSH)の血中濃度を測定することになります。検査の結果、FT3、FT4の甲状腺ホルモン値が高値であるか、TSH値が低値である場合、バセドウ病の可能性が疑われます。
さらに採血検査によってバセドウ病特有の自己抗体であるTSH受容体抗体(TRAb)が陽性の場合バセドウ病と診断されることになります。

バセドウ病の治療

バセドウ病の治療方法としては、抗甲状腺薬による薬物療法、放射線によるアイソトープ治療、外科手術による切除治療の3種類から患者様の状態にあわせて選択していきます。
まずは抗甲状腺薬の投与によって、甲状腺ホルモンの分泌を抑制し、ホルモン値を正常範囲に治めることを目指します。状態を見ながら徐々に薬の量を減らしていきますが、再発を防止するため、一定の期間服薬を続ける維持療法も必要となります。
ただし、抗甲状腺薬は副作用が多く、特に顆粒球減少症は病原体に対する抵抗性が弱くなってしまうため注意が必要です。
薬物療法を続けても十分な効果が得られない場合や、長期間の治療ができない場合、副作用が強い場合などでは、アイソトープ療法や切除手術を検討することになります。
バセドウ病の悪化要因として、強いストレスや喫煙などがあり、ストレスをうまく発散すること、禁煙することが治療の第一歩となります。

薬物療法

抗甲状腺薬

抗甲状腺薬としては、プロパジール、チウラジールなどが20世紀中盤ごろから使われています。稀であるとはいえ顆粒球減少・無顆粒球症などの生命にかかわる副作用もありますので、投与開始からしばらくの間は、2週間ごとに通院して副作用のチェックを行う必要があります。
服用中に38℃以上の高熱を発したり、のどに腫れを生じたりといった症状があらわれた場合、すぐに服用を中止して受診することが大切です。

バセドウ病を放置するとどうなる?

甲状腺機能が亢進していても気づかずに放置したり、治療を中断したりすると、ほとんどの場合バセドウ病は悪化していきます。最初から治療のやり直しとなって治療期間がいたずらに長くなってしまうだけでなく、悪化して甲状腺クリーゼを起こした場合、最悪の場合では多臓器に不全を起こして突然死といったことも考えられます。医師の指示があるまでしっかりと適切な治療を続けることが大切です。

バセドウ病と遺伝

バセドウ病は遺伝的因子とストレスや生活習慣などの環境的因子が組み合わさって発病すると考えられています。血縁の家族・親族にバセドウ病の罹患者がいる場合の発病率が高く、親にバセドウ病がある場合には健常者に比べて、約6~10倍その子も発症しやすいことが報告されています。

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