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橋本病

甲状腺機能低下症とは

甲状腺機能低下症とは

甲状腺の機能が低下し、甲状腺ホルモンの分泌が低下している状態です。甲状腺ホルモンが不足すると、疲れやすい、気力がなくなる、動作が緩慢になる、記憶力が低下する、むくみ、冷え性・寒がり、便秘など全身に症状があらわれます。ただし、低下の程度が軽症の場合症状はあらわれにくくなります。

橋本病とは

橋本病は甲状腺機能低下症の代表的な疾患の1つで、甲状腺に慢性的な炎症が起こり、それによって甲状腺ホルモンの分泌が低下します。炎症の原因は何かしらのきっかけで抗サイクログロブリン抗体(TgAb)、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)という自己免疫抗体が作られてしまい、甲状腺の組織を対象に攻撃することで徐々に組織が破壊されていき、甲状腺ホルモンの分泌が低下します。ただし、この自己抗体ができてしまう原因は未だ解明されていません。橋本病を発症しても、甲状腺機能の低下を伴わないことも多く、症状があらわれるのは女性に多い疾患です。

橋本病の症状

全身症状 冷え・寒がり、易疲労感(つかれやすい)、動作の鈍さ、体重の増加、嗄声、声が低くなる
体温 低体温
顔つき・首 甲状腺の腫れ、のどの違和感、顔のむくみ、焦点の定まらない顔つき
神経・精神症状 気力が無くなる、物を忘れる、眠気、ぼーっとした態度
循環器症状 徐脈(脈が少なくなる)、息切れする、手足のむくみ、心臓の肥大
消化器症状 食欲が低下する、舌が肥大する、便秘になる
皮膚 汗をかかない、皮膚が渇く、毛が抜ける(眉なども)、皮膚が蒼白くなる
筋骨症状 力が入らない、筋力が低下する、肩がこる、筋肉が疲れやすい
月経 過多月経、月経不順
血液値 コレステロール値が上昇、肝機能障害、貧血を起こす

橋本病に特有の顔つきは?

甲状腺ホルモンが不足することによって、重症になると外見的にも変化があらわれることがあります。顔のむくみが特徴的で、まぶた、顔の皮膚、唇などが全体的に腫れぼったくなり、ぼーっとした顔つきになります。

橋本病に伴う病気

無痛性甲状腺炎

甲状腺の細胞が破壊されることで、蓄積されていた甲状腺ホルモンが一時的に血中に流れ出し、甲状腺機能亢進症の症状があらわれます。蓄積されていたホルモンが無くなるまでの一過性のもので、1~4か月程度で自然に治っていきます。

橋本病の急性増悪

稀にですが、甲状腺の腫れが急激に進み、痛んだり発熱したりすることがあり、その場合一時的に甲状腺内のホルモンが血中に放出され、動悸などの甲状腺機能亢進症のような症状を呈することがあります。

悪性リンパ腫

甲状腺の炎症が慢性的に続くことで、甲状腺内にリンパ球が溜まってしまい、腫瘍化して悪性リンパ腫になることがあります。ただし、これも稀な症例です。

橋本病の検査と診断

採血検査で甲状腺ホルモン(FT3、FT4)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)の血中濃度を計測します。FT3、FT4が低値を示し、TSHが高値を示すと橋本病が疑われます。また、甲状腺の自己抗体である抗サイクログロブリン抗体(TgAb)と抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)の有無も同時に検査し、どちらかが陽性になれば橋本病と診断されます。
また触診も行い、橋本病に特有の甲状腺のゴツゴツとした腫れが認められるかどうかを確認します。

橋本病の治療

橋本病は、甲状腺機能低下を伴わない場合も多く、その場合治療を要しません。治療の必要性は血液検査による甲状腺機能の低下の有無によって判断していきます。治療が必要と判断された場合は、まずは薬物療法を試みます。薬物療法は主に甲状腺ホルモンをお薬で補っていく方法です。
また、甲状腺機能はストレスなど自律神経の乱れに大きく関連していますので、日常生活でストレスをうまく発散できるような工夫を重ねていくことも大切です。

薬物療法(チラーヂンS)

甲状腺ホルモンのFT4と同じ働きをするレボチロキシンナトリウムを成分とする薬です。この薬には含有量の異なるものが数種類あり、少量から投与しながら患者様の状態によって処方を変更していきます。甲状腺ホルモンでもFT4は1日の分泌量は変動せず、FT3は早朝に高値になります。FT4は肝臓などでFT3に変換されます。
1日1回の経口投与ですが、服用のタイミングとしては、この甲状腺ホルモンの性質から、起床時または食後30分以上を経た就寝前などが吸収の効率が良く、お勧めです。
ただし、1日のうちの同じ時間に忘れず服用するようにすることが大切ですので、個々の生活スタイルにあわせて、定時に服用する習慣をつけるようにしましょう。

同時に服用する薬に
注意してください

副作用の少ない、安全なお薬です。ただし、ある種のお薬やサプリメントと同時に服用すると、吸収が妨げられて効能が低下してしまうことがあります。
特に貧血などの鉄剤、アルミニウムや亜鉛などの金属成分のお薬やサプリメントとの同時服用はチラーヂンSの吸収効率を低下させることがわかっているため、注意が必要です。
また、お茶やコーヒーなどではなく、水または白湯で服用するようにしてください。

橋本病と遺伝

現在でも橋本病の正確な原因はわかっていませんが、発症する要因としては、遺伝的なもの、環境的なもの、内因的なものが複雑に関連していると考えられています。遺伝的要因は自己免疫の形成に関連し、そこにウイルス感染や薬剤などの環境的要因が加わり、さらに女性ホルモンの働きや出産などの内的要因が重なって発病するのではないかと考えられています。そのため、家族歴があるからといって、それだけで橋本病を心配する必要はあまりありません。ただし、甲状腺機能低下の何かしらの症状、急激な一時的な甲状腺機能亢進など気になる症状がある場合や、妊娠が判明した時点でその都度検査を受けておくことをお勧めしています。

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