尿酸値が高い、
高尿酸血症(痛風)とは
尿酸はプリン体の燃えかすのような老廃物です。細胞がプリン体によって代謝した後には必ずできる物質で、通常は一定量身体に溜められており、それ以上の分量になると尿に含まれて体外に排泄されます。この仕組みがうまく働かなくなり、血中の尿酸濃度が高くなると、尿酸塩になり結晶化して関節などにたまり痛風発作が起こります。尿酸値が高い状態が慢性化すると腎臓の疾患や尿路結石などのリスクが上昇します。
健診などで高尿酸値を指摘されたら、早めにご相談ください。
痛風発作
結晶化した尿酸塩が関節などに溜まって炎症を起こし、激しい痛みを生じるのが痛風発作です。足の親指のつけね辺りに起こることが多いのですが、その他に膝・くるぶしなどでも起こることがあります。急激な尿酸値の上昇で起こることが多いのですが、尿酸値が高いからといって必ず発作が起きるというわけでもありません。痛風発作が治まっても高尿酸血症の状態が治まるわけではなく、ゆっくりと合併症が進行していきますので、注意が必要です。
受診をお勧めする方
- 健診で血中尿酸値の高値を指摘された
- 痛風発作で激しい痛みに見舞われた
- 肥満を指摘されている
- 運動不足が続いている
- 忙しくて外食に偏っている
- 過度の飲酒が続いている
- 血縁の家族に高尿酸血症を発症した人がいる
- 水分補給が足りていない
- あまり野菜を食べない
- 高血圧がある
など
高尿酸血症の原因
高尿酸血症の原因としては、尿酸が作られ過ぎる状態と、尿酸がうまく排泄できない状態の2つの要因が考えられます。プリン体は、あらゆる生物に普通に存在する物質で人体でも産生されます。多くの場合、これに加えてプリン体が多いとされる、肉類、レバー、アルコール類などを摂取し過ぎる食生活の偏りが高尿酸血症の原因ですが、その他にも代謝異常を起こす病気などが原因となることもあります。また、腎機能に障害が起こると尿酸をうまく排泄できなくなります。
高尿酸血症の診断基準と検査
高尿酸状態でも、痛風発作の他の自覚症状はありません。そのため、診断の基準は採血検査による尿酸値の測定によります。血中尿酸値が7.0mg/dL以上が高尿酸血症の診断基準です。ただし、痛風発作が起きている間は正確な値を得にくいため、発作の症状が治まってからの測定となります。
高尿酸血症と診断された場合、尿酸が作られ過ぎているタイプか、排泄がうまくできないタイプか、原因疾患がないかなど、精密な検査を行うことになります。
高尿酸血症の合併症
高尿酸血症には、痛風発作の他にこれといった自覚症状はありません。痛風発作が起ると1日ぐらいで痛みのピークを迎え、1週間から10日程度で自然に治まっていきますが、痛みが引いたからといって高尿酸血症の状態が治ったわけではなく、体内で静かに進行し、全身に尿酸塩が蓄積され様々な合併症を発症します。
痛風結節
血中の尿酸濃度が高くなり飽和状態になると、尿酸は結晶化して関節をはじめ様々な臓器に蓄積します。それによって瘤のような硬い結節ができてしまうのが尿酸結節で、脊椎にできると麻痺を起こす可能性があり、その他の骨にできると骨折する可能性があります。
動脈硬化
尿酸が血中で飽和した状態が続くと、血管壁にダメージを与え、動脈硬化を起こしやすくなります。また、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった他の生活習慣病も合併しやすくなります。多くの生活習慣病が合併していると、動脈硬化のリスクはさらに高くなります。
腎機能障害
腎臓の血液を濾過する部分には、細い血管がたくさんありますので、特に尿酸塩結晶の影響を受けやすいとされています。そのため腎機能障害を起こし、そのまま進行すると腎不全にも陥りかねません。腎不全が進行すると、尿中の老廃物や毒素が濾過できなくなり人工透析が必要になることもあり、QOL(生活の質)が大きく低下してしまいます。
尿路結石
尿酸がカルシウムと結合した尿酸カルシウムは、腎臓から尿管、膀胱、尿道と至る尿路にできる結石のもととなる物質の一つです。そのため高尿酸血症があると尿路結石が起こりやすくなります。尿管、尿道など狭い部分に詰まると激痛が生じます。
高尿酸血症の治療
高尿酸血症と診断された場合、まずは食生活の改善による食事療法に取り組みます。プリン体の多い食材はできるだけ避けながらも、偏らずバランスの良い食事内容を維持します。肥満が引き金となっていることも多いため、カロリー計算もしっかりと行って、適正体重への減量、および維持をめざします。食事内容としては、食物繊維の多い野菜、海藻などのほかいわゆるアルカリ性食品といわれる食材類を摂取するように心がけます。また尿酸は尿として排泄されますので、尿を作りやすいように水分摂取を心がけてください。
プリン体が多く含まれる食品
- エビ
- アジ干物
- イワシ干物
- カツオ
- レバー
- 豚肉
- 牛ヒレ肉
などは、できるだけ避けてください。
アルカリ性食品
- 野菜(キャベツ、なす、ネギ、かぶ、ごぼう、大根、にんじん、サツマイモ、ショウガ、里芋、レンコンなど)
- 果物
- 海藻(昆布・わかめなど)
- きのこ
- 大豆(納豆・豆腐など)
などを摂取するように心がけましょう。
痛風発作が起きている時の治療
痛風発作が起こっている場合、急激に尿酸値を下げる治療を行うとかえって重症化させてしまう可能性があるため、尿酸値を下げる治療を行うことができません。
発作の間は、鎮痛消炎剤などで痛みを緩和しながら症状の治まるのを待ちます。痛みは個人差がありますが、24時間程度でピークを迎え、その後だんだん落ちつきながら1週間から10日ほどで改善していきます。発作が治まったあとも尿酸値が下がるわけではありませんので、落ちついてから尿酸値を下げる生活習慣改善やお薬による治療を行うことになります。